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【新古事記037】名古屋のなほほん

18時10分


「ただいまー」


聖が帰ってきた。


「おかえりー」


「よう、お掃除と…洗濯もの取り込んでくれた?」


「うん、やってあるよ」


「ありがとう。今からすぐご飯作るから」


聖は荷物を置き着替えると、すぐキッチンに立った。


「あれ?カレー残ってる。よう、カレー残したの?珍しいね」


冷蔵庫を開けた聖が言った。


「う、うん。ちょっと食欲なくて…」


「ふーん」


聖は陽を観察するように目を向けた。


「だ、大丈夫だよ。たまにはそういうことだってあるよ」


「ふーん、それならいいけど」


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「あっ、そうだ!!」


食事がはじまると、聖はなにかを思い出したように言った。そして、立ち上がるとバッグからスマホを取り出した。


それを見て陽は言った。


「おい、聖〜。食事中のスマホは禁止って聖が言ったんじゃなかった?


食事は命をいただく神聖なものなんだろー」


「わかってる。わかってるけど、ちょっと今回は特別なのよ」


聖は陽に目を向けず、スマホを操作した。そして陽にスマホを向けて言った。


「じゃーん!!」


そこには生まれたばかりの赤ん坊と母親が写っていた。


「え?これ…」


「うん、なほほんの赤ちゃん産まれたんだよ!二人目。男の子っ!!」


聖は満面の笑みで言った。


「奈帆ちゃん、今は名古屋だっけか?」


「うん。旦那さんの転勤でね」


なほほんこと奈帆ちゃんは、聖の高校時代からの親友だった。陽は聖からスマホを奪い取った。


「うわー、かわいいな…めっちゃ小さいし」


陽はスマホの画面を覗き込んで言った。小さい命が本当に愛おしく思えた。


「でしょでしょ、めっちゃかわいいよね。なほほんにそっくり」


陽はふと航の話を思い出した。


(氷川さんは自分の赤ちゃんを見たとき、かわいいと思わなかったって言ってたな。


人の赤ちゃんですらこんなにかわいいのに


自分の子供なんて想像を絶するかわいさだと思うんだけどな?)


陽は航の感情が不思議に思えて仕方がなかった。


食事を続けながら、陽は聖に言った。


「昨日さ、氷川さんと結構話してさ」


「え、どんなどんな?


私、いつも入れ替わりだからなー


真面目そうな人だよね。口数少なそう」


「それがそうでもなくてさー


いや、不真面目って意味じゃないよ…」


陽は航との会話の一部始終を掻い摘んで聖に伝えた。


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カチャカチャ


ザーッ


キュッキュッ

 
食事を終え聖は食器を洗っていた。


陽はソファに転がり、テレビを眺めていた。


「ようー、お風呂入っちゃいなよー」


「うーん、もう少し」


陽は適当な返事を返した。