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【新古事記013】淡い希望

聖が家を出た後、陽はベッドの中でウトウトしたり、スマホを触ったり…無駄な時間を過ごしていた。


こんなことをしていてはいけないと思いつつ、今日は夕方から仕事で夜勤もある。今のうちに身体を休めておかなければ…と言い訳して自分を甘やかした。


午前11:00


陽はあきらめるようにベッドから出てきた。もう昼に近い。また無駄に過ごしてしまったというなんとも言えない罪悪感。


人は時間があるとついついダラダラしてしまう生き物のようだ。いや、自分だけか?


陽は特にお腹は空いていなかったが、聖の作っておいてくれた味噌汁を温め、おむすびを食べた。朝食だか昼食だかわからない食事を済ませた。


「このままでいいわけがない」


陽は呟いた。


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15:45


「おはようございます」


フロントには聖が立っていた。


陽はフロントバックに行き、五十嵐さんに挨拶をした。すると五十嵐さんが声をかけてきた。


「ようちゃん、候補日上げておいたから、社内面接の日程決めておいて」


「わかりました」


陽は返事をした。


陽の働くホテルは3年前に買収され、それ以降経営体制が大幅に変わっていた。陽は10年前、就職に失敗した自分を快く迎え入れてくれたことに感謝していたし、職場環境に不満はなかった。しかし、この先のことが不安だった。はっきり言うと金銭面のことだ。陽の給料は手取りで20万円に届かなかった。


3年前の買収騒動の時、陽は不安というより希望の方が強かった。これで待遇面が改善されるのでは?という期待があった。しかし、会社は設備投資を先行し、今のところ陽の淡い希望は希望でしかなかった。


この10年間、職場に協力的であったと思うし、より働きやすい職場環境を構築してきた言う自負もあった。次回の社内面接では思い切って給与面の改善をお願いしてみようと思っていた。

 

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午後05:05


「お先に失礼します」


聖は陽に近づいてきて、耳元で言った。


「夜勤、がんばってね」


「聖、おつかれ。また明日」