「と、その前に…
もやしよ、古事記でスサノオが泣き喚いていたシーンはわかるか?」
ノブナガは陽に聞いた。
「えっと確か…
父であるイザナギに海原を治めるように言われたけど、母に会うために黄泉の国に行きたい、と駄々をこねたんでしたよね?」
カナコが声を上げた。
「おお!ヨウくん!!
やるじゃないの!!」
ノブナガが続けた。
「うむ、いいだろう。
では黄泉の国とはどんなところだと思う?」
次は聖が答えた。
「きっと…暗くてジメジメしてカビ臭くて…
そんなところなんじゃないですかね?」
「さすが聖ちゃん!!
素晴らしい回答!!3,000ポイント!!」
「やったー!!」
ノブナガ続けた。
「ヨミとは闇であり、止みであり、病みである。つまりそう言う世界だ!!」
聖が感嘆の声を上げた。
「えええっ!!
ノブナガさん、すごい!!
なにその解釈」
ノブナガは満足そうに頷き、続けた。
「もやし、お前はそんな世界に行きたいと思うか?」
陽はすぐ答えた。
「いえ、行きたくないです」
「うむ、誰も好き好んでそんな世界には行きたがらないだろう。
しかしだ!!
スサノオは愛するイザナミに会うためなら、自ら進んで黄泉の国に行くと言う。
泣きわめくスサノオをマザコンだと揶揄する輩もおるが、スサノオのイザナミへの愛情は本物だろう。本来、母子とはそういうものだ。少なくともオレはそう思う。
オレだってMMKTに会うためならどこへだっていくさ」
ノブナガはそう言うと遠い目をして西の空を見つめた。
「え?
エムエムケーティ?
なんですそれ?」
聖が不思議そうに聞くとカナコが説明した。
「MMKT。
萌え萌えけいこたんの略よ。
うちのお母さん、恵子っていうのよ」
「ふふふ
百恵の恵に子供の子で恵子だ!!」
聖はポカンとした顔をしたのち、声を出して笑った。
「あはははははっ
ウ、ウケる〜〜
ノブナガさん、なんかかわいい」
愛する母に会うためなら黄泉の国にでも喜んで行く。
陽は「スサノオはマザコン」くらいの認識で古事記を読んでいたが、ノブナガのこの捉え方には驚き、そして言った。
「ノブナガさん、古事記をそこまで深読みしているんですね」
ノブナガは頷いた。
「で?ザビエルはどうしたのよ?
まさか忘れたんじゃないでしょうね?」
カナコがそう言うと、ノブナガは続けた。