「あーーー!!
あれ!!」
聖が店内のテレビを指差した。
「どしたん?ひーちゃん?」
カナコはそう言ってテレビを見た。テレビにはプロレスの覆面を被った2人組が映し出されていた。過去にブレイクしたお笑い芸人のVTRだった。
「ああ、お笑いの…
名前なんだっけ?流行ったよね、この人たち。3年くらい前かな?
「ハヤシじゃないよ、モリだよっ」
ってやつでしょ?
最近全く見ないけど…」
「かなぶん、タカシ×タカシよ。
私、大好きだったんだー」
「ふーん…
芸能人は大変よねー
世間の人は一発屋なんて揶揄するけれど、一回だけでもブレイクするなんてたいしたものよ。
音楽だって…それだけでやっていける人なんて本当に一部だもの」
「かなぶんは音楽で生計立ててるんじゃないの?」
聖がカナコに聞いた。
「まっさかーーー
とても食べてなんか行けないよ
わたし、居酒屋でバイトしてるし。
わたし、なんだってやるよ。日雇いのバイトがあれば建築現場にだって出るわ。
今は…生活費を切り詰めるために嫌々お兄ちゃんと同居してるの」
「カナコ!!一言余計だっ!!
大好きなお兄ちゃんと言え!!」
「そうなんだー、それでも好きなことやるってすごいね」
「まぁ、どこかで区切りはつけないといけないと思ってるけどね。
わたし、世界を変えたいのよ。
わたしの夢は…
「世界平和」
昔は音楽で有名になりたいって思ったけどね。
いつになるかわからないけど…私が死んだ後でもいいから、きっといつか…世界平和が実現すると信じてるの。
私はそのための礎になるの。それがわたしの夢。
だから、手段は音楽でもそれ以外でもなんでもいいのよ」
「うわー、かなぶん…すごいな。
わたし、そういう人生の目標みたいのないから。
それに…
かなぶんが言うと本当に世界平和が実現しそうな気がする」
カナコはニコリと笑った。
「ありがとう、ひーちゃん
嬉しいわ」