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【新古事記193】カナコの夢

「あーーー!!


あれ!!」


聖が店内のテレビを指差した。


「どしたん?ひーちゃん?」


カナコはそう言ってテレビを見た。テレビにはプロレスの覆面を被った2人組が映し出されていた。過去にブレイクしたお笑い芸人のVTRだった。


「ああ、お笑いの…


名前なんだっけ?流行ったよね、この人たち。3年くらい前かな?

 

「ハヤシじゃないよ、モリだよっ」

 

ってやつでしょ?


最近全く見ないけど…」


「かなぶん、タカシ×タカシよ。


私、大好きだったんだー」


「ふーん…


芸能人は大変よねー


世間の人は一発屋なんて揶揄するけれど、一回だけでもブレイクするなんてたいしたものよ。


音楽だって…それだけでやっていける人なんて本当に一部だもの」


「かなぶんは音楽で生計立ててるんじゃないの?」


聖がカナコに聞いた。


「まっさかーーー


とても食べてなんか行けないよ


わたし、居酒屋でバイトしてるし。


わたし、なんだってやるよ。日雇いのバイトがあれば建築現場にだって出るわ。


今は…生活費を切り詰めるために嫌々お兄ちゃんと同居してるの」


「カナコ!!一言余計だっ!!


大好きなお兄ちゃんと言え!!」


「そうなんだー、それでも好きなことやるってすごいね」


「まぁ、どこかで区切りはつけないといけないと思ってるけどね。


わたし、世界を変えたいのよ。


わたしの夢は…


「世界平和」


昔は音楽で有名になりたいって思ったけどね。


いつになるかわからないけど…私が死んだ後でもいいから、きっといつか…世界平和が実現すると信じてるの。


私はそのための礎になるの。それがわたしの夢。


だから、手段は音楽でもそれ以外でもなんでもいいのよ」


「うわー、かなぶん…すごいな。


わたし、そういう人生の目標みたいのないから。


それに…


かなぶんが言うと本当に世界平和が実現しそうな気がする」


カナコはニコリと笑った。


「ありがとう、ひーちゃん

 

 嬉しいわ」