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【新古事記094】パラダイムシフト

「残念ながら悟りを得る前に僕は疲れ切ってしまいました。


ここまでしなければ幸せになれないのならば、もう諦めよう、僕には無理だ…そう思いました。


でもやっぱり、その執着から離れるのは大変でしたよ。なにせ時間もお金も投資してきたわけですから…そこには同じ方向を向いている仲間もいますしね。


でもね、やっぱりそこにいる人たちが僕には幸せそうには見えなかった。


だから僕にはそこから離れる決意が出来たんだと思います。


そして、その時に手に取ったのが…古事記でした」


「その古事記が氷川さんの人生を変えたわけですね?」

 

陽の期待は高まっていった。


「まぁそう簡単な話ではありませんでしたけど」


航はそう言って笑うと、さらに続けた。


「最初に現代語訳の古事記を買ったんですけど、これがとにかくつまらないんです。


読んでいるとすぐ眠くなる」


陽は肩透かしを食らったような気がした。

 

「でも、僕にはそこに何かがあるような気がした。

 

それに、もうスピリチュアルから足を洗って…足を洗ってっておかしな言い方ですけど。

 

あ、僕は厳密にはスピリチュアルが嫌いなわけではないんですけどね。


とにかく古事記を頑張ってみようと思ったんです。


そして、何度も何度も挫折を繰り返しながら、それでも粘って読み続け、自分なりに古事記を消化出来た時…


パラダイムシフトが起こりました」


パラダイムシフト?


パラダイムシフトってなんですか」


陽は聞いたことのない言葉 だったので素直に聞いた。


「そうですね…意識が劇的に変化することです」


「それくらい劇的な変化が氷川さんの中で起こったんですね?」


「いえ、もっとこうなんというか…


なーんだ…って感じです」


「え?だってこう、なんというか…もっとドラマティックな感じではなかったんですか?」


陽は期待を裏切られたような気がした。


「全然ドラマティックではありませんでしたね。


僕が何年もかけて探し続けていたものは、こんなに身近に存在していたんです。


灯台下暗しとは、まさにこのことです」