ヤマサチヒコ、名前をつけてやる
~これまでのお話~
正体を見られたトヨタマビメは、海の世界に帰ることになりました
ヤマサチに背を向けたトヨタマビメは、海の通路を通りすたすたと進んでいきました
そして、一度も振り返ることなく海の中に消えてしまいました
ヤマサチは追いかけようとしましたが、海の通路はあっという間に消えてしまいました
ポツン・・・
「こ、これからどうしよう」
ヤマサチは赤ん坊を抱っこしたまま呆然と立ち尽くしました
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「オギャア、オギャア!!」
ハッ!!
赤ん坊の泣き声で、ヤマサチは我に返りました
「と、とにかくこの子を育てなければ!!」
突如、シングルファザーになったヤマサチの子育てがスタートしました
「おむつってこれでいいのかな???」
「今日のお昼は豚骨ラーメンだよ」
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「ああ、ダメだ・・・
豚骨ラーメン、嫌いなのかな?
まったく…好き嫌いは良くないんだぞ!!
嗚呼・・・
オレだけではとてもじゃないが育児はできない
トヨタマビメ、帰ってきてくれないかなぁ・・・」
その時です
リンリンリリンリンリンリリンリン♪
リンリンリリンリンリリリン♪
家の電話のベルが鳴りました
「もしかして、トヨタマビメかも!!」
ヤマサチは急いで電話に出ました
「シモシモ!!トヨタマビメ!!?」
しかし、電話の相手はトヨタマビメではありませんでした。
『は?
私、日南市役所戸籍課の者ですが・・・
お宅の赤ちゃん、出生届がまだ提出されていませんよ
さっさと提出してくださいね、では』
ガチャ、ツーツーツー
「赤ん坊の名前・・・決めてなかった!!
うーん、
太陽の御子であるオレの子で・・・
波打ち際に立てた産屋の屋根を
鵜の羽と茅で葺こうとしたけど
その前に生まれちゃったから・・・
(あまつひだかひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと )
にしよう!!」
こうして、ヤマサチヒコはその日の午後に出生届を提出しました
よう