母の愛③
~これまでのお話~
八十神(ヤソガミ:オオナムヂの兄達)に命を狙われたオオナムヂは、根の国へ身を隠しました。根の国でスサノオの度重なる試練を乗り越えたオオナムヂは、スサノオの娘・スセリビメを正妻に迎え、また根の国の宝を携え、中つ国へ帰ってきました。そして、兄達を見事に打ち払い国造りをスタートしました。
「いったい何の騒ぎでしょう?」
オオナムヂと八十神の争いに気づき、一つの人影が山中を動いていました。
「あれは?オオナムヂ???」
木の陰から争いの様子を見守っているのは、オオナムヂの母・刺国若比売(サシクニワカヒメ)でした。
サシクニワカヒメは、オオナムヂがヤソガミの罠にはまり命を落とした際、必死になってオオナムヂを蘇らせた女神です。
八十神を堂々と打ち払うオオナムヂの姿を見て、サシクニワカヒメは驚きました。
根の国に逃れたオオナムヂの無事を毎日欠かすことなく祈っていたサシクニワカヒメですが、もう二度と会えない覚悟もしていました。
サシクニワカヒメは、目の前の光景を信じられない思いでしばらく見つめていました。
「オオナムヂ、すっかり立派になって・・・」
立派に成長し、結婚もしたオオナムヂに再会したい気持ちもありましたが、サシクニワカヒメはオオナムヂの前に姿を現すことはしませんでした。
オオナムヂの前途を祈り、サシクニワカヒメはそっと姿を消しました。
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