かけおち
~これまでのお話~
八十神(ヤソガミ:オオナムヂの兄達)に命を狙われ根の国に逃れたオオナムヂ。根の国でスセリビメと結婚しましたが、スセリビメの父・スサノオから試練を与え続けられます。このままではいつか殺されてしまうと思い、根の国の宝を持ち出し、スセリビメと共に中つ国(なかつくに:地上世界)に逃げることにしました。しかし誤って「天の沼琴」と呼ばれる琴を木の枝に引っ掛けてしまいます。辺りには大音響が響いたため、スサノオは目を覚まし二人を追いかけました。
オオナムヂはスセリビメを背負い、必死に走りました。しばらくすると・・・
ドンガラガーン!!
スサノオの屋敷が崩れ落ち、モウモウと土煙が立ち上っています。
「お屋敷が崩れた。お父さんが柱を引き抜いたんだわ。どうしよう、追いつかれたら大変なことになる・・・」
スセリビメは、怒り狂う父の姿を想像し怖くなってきました。もし父に追いつかれたら、今度こそオオナムヂは殺されてしまうかもしれません。
「安心するんだ、スセリビメ。髪を柱に結んでおいたからスサノオ様は随分と手こずったようだ。さぁ先を急ごう。」
オオナムヂは肝が据わっています。恐怖に飲み込まれ動揺するようなことはありません。根の国に来る前は、素直過ぎるがゆえに兄の罠に2度も嵌ってしまいましたが、いつの間にかたくましく成長していたのです。
ついに二人は根の国と中つ国の境である、黄泉平坂(よもつひらさか)を上り切りました。ここまでくればもう大丈夫です。
スセリビメは、ホッした気持ちになりましたが、スサノオにだまって根の国を離れることを寂しく思いました。もし、父に結婚を祝福されオオナムヂに嫁ぐことが出来ていれば、それはなんと素晴らしいことでしょうか。
こうして二人のかけおちは無事に成功しました。
よう